最近息子は寝相が悪い。
きちんと寝かせたはずなのに、ふと気付くと90度回転している。
なんでかなぁと思っていたら寝返りだった。
足を持ち上げわしわし動いているなと思うと、コテン、と左に倒れる。
横に寝た状態でじたばたすると、仰向けで寝るよりも
ずっと体が動きやすくなるので、結果的に体が違う方向を向くことになる。
そうやって、寝返りしても横向きになる程度だったのだけど、
最近は仰向けの状態から横向きの状態になって、
さらにうつぶせの状態になるまでになった。
自分でうつぶせになったくせに、うつぶせの状態だとお腹が苦しいのか
うえーんと泣き出してしまう。
腕に力がないので、手をついて上半身を支えるということができない。
体重が胸とお腹にかかってたぶん苦しいのだと思う。
その自業自得で苦しくなって泣いてる様がおかしくて、
しばらく苦しんだままほっといて見ている。
それで、本格的に泣き出したら
もとの状態に戻してやるというの何度か繰り返していた。
そうしたら、うつぶせになっても泣かなくなってきた。
うー、うーと顔を真っ赤にしながら声を上げるのだけど、
泣く声とは違って何かに挑みかかっているような感じで、
しきりに足をつっぱる。
なんだか手を使わずに足だけで匍匐前進しているような感じ。
もしかしたら自分の力で移動したいという欲求が生まれてきているのかなあ
という気がする。
そう考えると赤ちゃんて、成長が早いなと思う。
彼は完全に受け身の存在だったはずなのに、
能動性が芽生えてきたと言うこと。
成長にともなって、
以前よくやってた行動が消えていって違った行動が現れてくる。
少し前によくあったのは、何かにみとれる、という行動。
基本的には「寝る、クソ&シッコで泣く、おっぱい、きそまそ」の4パターンしか
しないのだけど、あるときふと何かに「見とれる」と思われるような
行動をとっていた。
きゃっきゃしていたかと思うと急に静かになって、何かを見ている。
そういう時、大抵視線の先には派手な色のものがある。
それに魅入るような状態になっている。
視線を集中させて動きがなくなる。
体を揺らすと視線は追従する。
おそらくあの頃はまだ、物体の認知ができていない。
目には3次元の情報が2次元の網膜に写像されて入ってくる。
その情報を脳の中で再構成することで、
輪郭の抽出、奥行きの検知、物体間の配置の関係性の把握などを行う。
だけど、乳児の脳の中ではそんなことは起こっていなくて、
ただ単にその色の二次元配列を見ているに過ぎない。
線のない色だけの世界に生きているのだと思う。
だからこそ、目を惹く色に見とれるのだと思う。
その感じ方は大人になったら決してできないことだと思う。
色のクオリアを感じるだけの状態だろう。
自己と他者の区別もついていないだろうに、
それでもクオリアを感じることはできるのだろうか?
自己という概念の確立なしに、クオリアはあり得るのか?
そんなことを思わされた。
ちなみに、「きそまそ」というのはじたばたと手や足を偶有的に動かすことである。
嫁のお母さんが命名した。
じたばた、と書いたが、じたばたというほどにはじたばたしていない。
もっと力がなくてか細くて、繊細で、無軌道でしっかりしているのである。
「きそまそ」という音の響きがまさにしっくりくるので家族内では
すでに日本語として使っている。
(あ、今気付いたんだけど、これってジェネラル・ムーブメントのことか?)
手や足の動きが不思議で、単調なんだけど、変化はあって、
ランダムかと言われるとなにか規則性のようなものを感じる。
なんとなく、ストレンジアトラクタの振る舞いに似ている。
脳は複雑系なので、まっさらな状態でそういうアウトプットが現れても
なんらおかしくはないけれど。
ところで、寝返りはいつも左側(息子中心座標だと右)に倒れる。
足を持ち上げるとエネルギー的には鞍点になって、
右にも左にも簡単に倒れるけれど、
どちらの向きも同じ確率になるはずである。
にも関わらず、毎回左側なのである。
なんでかなーと考えてみたら、以下のような推測が生まれた。
いつも息子が寝るときは左側に母親が寝て、息子は左側を向いて
おっぱいを飲みながら寝る。
おそらく「左側を向く」という状態が息子にとっては心地よい状態と
結びついて学習しているのであろう。
便意その他の理由で、不快な感情がうまれると
それを是正しようとして快な状態にしようとして、
それが「左側を向く」という行動を生み出すのではないか。
勝手にじたばたしていて、偶然寝返りを打ったように見えて、
実は自発的に左を向くというアクションを取っているのかもしれない。
それの証拠に、左を向くとものすごい勢いで指しゃぶりをはじめる。
「左向き」+「口の中に適度な柔らかさの何かがあってそれをあむあむ」
→気持ちいい!
という回路ができあがっているのじゃないだろうか。
そうやって見ると、こいつは見事にオペラント条件付けを学習している。
コカインと部屋の色の関連を学習するマウスの実験を思い出した。
サイエンスやアカデミクスの世界からは離れてしまったけれど、
認知科学(特に発達心理学)は目の前で進行中であります。
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