国内の全てのまんがを網羅するように読んでるわけじゃないので、
統計的な有意性を言えるわけではないのですが、
ここんところ新婚系のマンガが増えてきてる気がします。
ひとつがこれで、
「僕の小規模な生活」
いまモーニングで連載中だが、
結婚→妊娠→出産→子育て
という感じで進んでいっている。
新婚というか、「結婚→妊娠→出産→子育て」という流れで描かれる
生活感満載の描写に個人的には共感している。
「新婚」のもつハネムーン的な性質に惹かれているのではなくて、
一緒に生活していくうちになじんでいくけど、まだ未知の部分があって
発見があるし、そこに苦楽があるというあたりに面白みを感じている。
新婚生活や出産や子育てというモチーフは、
美化されたり、過度にヒューマニスティックに書かれたり、
ともかく善なるものというスタンスで書かれていることが多いと思うのだけど、
この作品では作者独自の(歪んだ)価値観をもとに
そういう見方とはちがった視点で描かれているので、
そこらへんが親しみが持てる。
し、描かれているエピソードに既視感を感じたりすることもあるので、
「他の家庭も同じように苦労しているんだなあ」とわかって
自分にとって一種の慰めになっている。
それからこれ。
「とろける鉄工所」
これもモーニング連載中。
もともとの題材が鉄工所モノで溶接所の日常を描いたものなのだけど、
主人公の奥さんが妊娠して出産するあたりまでいま話が来ている。
自分には知り得ない溶接所の様子が描かれていて、情報として面白いし、
溶接には高圧ガスがつきものなので、
高圧ガスの話題がでてくると、なんだか嬉しくなる。
夫婦二人家族の食卓の風景や、
奥さんの妊娠が発覚して夫婦でおたおたする様子や、
つわりのひどい奥さんを気遣う様子とか、
やはり「新婚→妊娠→出産」という流れのなかで起こる
悲喜交々(ひきこもごも)が、自分の記憶と触れるとき
懐かしくて優しい気分になるのであった。
上記ふたつの作品は、作中の子どもが自分の息子の年齢にかなり近いため、
親近感は倍加する。
それから、震災直後にネット上で見つけたマンガ「言戯」。
なんと、宮城県からこのマンガを描いて発信してらっしゃる!
関東よりもよっぽど被害も大きく、余震も大きい場所で
その場所の情報をマンガで伝えてもらえることのなんと得難いこと。
どういうきっかけだったか覚えてないけど、
たしか地震関連のネタでこのマンガブログを発見し、
遡って読んでいったら「恋人→結婚→第1子誕生→大地震」という流れで、
今日、しばらくぶりに読んでみたらなんと第2子が生まれていた!!
「僕の小規模な〜」の中にも回想シーンとして、
結婚前の様子が描かれていたりするんだけど、
こちらはリアルタイムで結婚前のノロケな様子から
結婚して落ち着いていき、さらに子どもが出来て家族の絆が強まっていく
様子が描かれていて、良いです。
恋人→新婚→第1子誕生と移り変わるにつれて、
夫と妻の外面の描写もしっかり変化していって、
いまでは堂々たる中年一歩手前として描かれているのもまた、いい。
ちなみに、震災直後のマンガが単行本になっているようです。
「3.11東日本大震災~君と見た風景~ 」
今の自分は、「お前が好きでたまらねえ!」的なラブロマンス全開の関係性に
リアリティを感じられなくて、
そういうフェーズが過ぎて二人の関係性が熟すように"枯れて"いく様子を
みているのが心地いい。
夫婦になると毎日顔を合わせるわけで、
毎日どぎつい味付けだと食べていられない。
だから基本的には味はなくていいわけで、
だけど噛みしめると味がじわっと感じられる。
そういう関係性にリアリティを感じる。
もう一つ、ネットで連載されている新婚系マンガブログがあって、
それがこちら。
「中国嫁日記」
http://blog.livedoor.jp/keumaya-china/
(おそらくほとんどの男性諸氏は嫉妬に狂いながら読むことになると思う)
こちらのマンガはまだ「結婚→新婚」で、上記の他のマンガのように
出産にも妊娠にも至ってはいない。
なのでもっとノロケ要素が多くてもよさそうなものだが、
そういう要素はなくて、古典的な漫才のような雰囲気で
夫婦の生活が描かれている。
いま紹介した他のマンガのように
新婚生活上のあれこれ的なおもしろさではなくて
中国と日本の異文化間ギャップのおもしろさが大きなウェイトを
占めていると思われるが、そういう意味では同系統の「ダーリンは外国人」よりも
(夫がデブでオタクということもあって)生活感が濃厚で、話題も下世話で
そういうところが気に入っている。
参考「ダーリンは外国人」
なんで、こう、「新婚系」(と自分が勝手に名付けた)ジャンルが好きになったのか、
はたまた目にとまるようになったのかよくわからないが、
自分が似たような環境になったから気付くようになったのかもしれない。
よく、妊娠した女性が、思った以上に街中を妊婦が歩いていて驚く、
というようなものかもしれない。
スルメを噛むと味がするように、
日常の、普通なら味のしないなかで時折感じる
地味だけど滋味を感じさせるようなおもしろみや発見の中に
悦びを感じるようになった。
そういうのを感じさせてくれる作品が最近目に付くのである。
他にもあったような気がするんだけど
ぱっと浮かばないので、浮かんだらまた書きます。