少しは落ち着いて来たと思う。
仕事量としては一ヶ月前と今とでそれほど変わらないのだけど、
会社のことを把握してきたので、
覚えたり考えたりする量が減った分、
わずかながら余裕がでてきたのかもしれない。
それに、体の方も重いものを動かすのに必要な筋力がついてきたようで、
毎朝の筋肉痛も減ってきた。
医療ガス屋にとって、冬は1年で一番忙しい時期で、
さらに年度末の3月は官公庁の入札の仕事も重なって
その忙しさにさらに拍車がかかる。
この時期が過ぎれば、もう少し余裕ができるかもしれない。
会社に入って"こちら側"から社会を眺めると、
これまでとはまた違った世界の様相をみることができる。
それが、正直、面白い。
会社を継承するということは、取引のあるお客さんに対する責任と
働いてくれている従業員の人たちの生活を守るという重責を
背負うことで、会社の運営は真摯に考えなくてはいけないことだ。
だから、もしかしたらそう表現することは不謹慎なことなのかもしれないけれど、
でもいままで住んできて知っているつもりだった世界の
気付かなかったor真面目には考えなかった側面が見えて、
面白いと思った。
我ら研究者にとっては何かを「知ること」は
すなわちリワード(報酬)であり、
ホラス・ウォルポールの言うように、
「考える者にとって世界は喜劇」なのである。
どちらかというと、自分はいままで「きれいごと」の世界にいたんだな
ということを改めて思った。
そして"きれいごと"だけでは成立し得ない世界があることをつきつけられている。
"きれいごと"の言える世界できれいごとを言うのは簡単だ。
それは何も作ったことのない人間が
簡単に映画や芸術作品にケチを付ける感覚に似ている。
そして、どんなにちんけな作品でも何かを創造することが大変なように、
"きれいごと"の言えない世界で"きれいごと"を現実にするための行動も
やはりとても難しい。
そんな状態であっても、会社というのは大きな力を持っている。
小さいし、従業員数も1桁あれば足りる会社だけれど、
それでも年商は1億を超えている。
世界に対して影響を与える力は
いままでの自分から考えれば非常に大きいものだし、
27歳の若造が持つ力としても分不相応に大きい。
それでも、少しでも野心のある奴ならば、
その力をどう振るってやろうかと、
武者震いしてもおかしくはないだろう。
この世界の当事者になる。
いままでもそのつもりではあったのだけど。