フェムトセカンド #七味とーがラジオ / @melonsode

The Destination is unknown. The Journey is the Reward.
Author: 野澤真一 / NOZAWA Shinichi , version 2.0220330 / Podcast: 七味とーがラジオ / twitter: @melonsode

たゆたう金魚の意志

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チェゴヤ。

チェゴヤの一角を茂木研が占拠。
あれ?なぜか就職して出て行ったはずの後輩がいる。

・・・そうか、ゴールデンウィークか。
ーーーーーーーー。

茂木さんが隣に座ったので少し研究の話をする。
「俺はさぁ、海にいこうとか何かをしようとか、
そういう自発性をやってほしいんだよ。
今言ったような確率分布の話も大事だけどさぁ・・・」
というようなことを言われた。

自分がいま考えているのは
ポリア・エッゲンベルガー分布という分布。
確率変数を10個にしてシミュレーションすると、
多峰性の分布ができたりできなかったりして面白い。
ある種の自己組織化が起こる動的な分布と捉えることができる(と思う)。

茂木さんはやはり多動症を地でいく人なので、
よっぽどこちらが面白い応答をバンバンしないと、
一定の話題を保ち続けることができない。
そうするだけの研究の話題がないのがいけないのだけれど、
やはりこういう時ぐらいしか茂木さんと話す時間がないので、
大した話もできず終わってしまったのが
(いつものことながら)惜しい。

今日のゼミには芸大のノブクニさんがいらしてトークしてくださった。
「いらしてトーク」というか、これから茂木研の一員になるのかしら?

その後、論文紹介2件。
催眠術をかけて記憶を抑圧したときの脳活動の話と、
漢字仮名交じり分、ひらがな分、それぞれのスペースありなし、という
4パターンの文章を読むときの速度を比較した論文。

それらはつつがなく終了し、
ゼミのあとのまったりとした雰囲気に後ろ髪をひかれながらも、
さっさとCSLを後にした。

向かった先は、銀座のギャラリー小柳

内藤 礼 Rei NAITO

color beginning
March 24 - May 16, 2009

内藤礼さんの展覧会である。

20点ほどの作品数で、内藤さんにはめずらしく、
普通の意味でのドローイングが大半だった。

5分ぐらいでひとしきり見て、
やはり戻ってきてしまうのは、
先日の横浜トリエンナーレでもみた作品であった。

このサイトに写真が載っている。
無題(母型) 内藤礼 横浜トリエンナーレ2008|ON THE STREET CORNER インディーズ取材日記

電気コンロが床にふたつ並んでいて、
その電熱線は赤々としている。
それだけか、と一瞬思うのだけど、
そうではなくて、その上に一本の糸が垂れている。

その糸が、電熱線の作る上昇気流によって、
狂ったように舞い、漂い、落ちてゆき、また舞い上がる。
糸は絶え間なく変化し続け、上昇しては下降する。

横浜トリエンナーレの時も、今回も、その糸の動きに魅入った。
横トリの時は茶室のような小さな小屋の中にそれがおいてあり、
遠くから眺めるしかなかった。
いまは、すぐ足下で熱せられた空気が上昇し糸を震わせ、
自分の頬をなでてゆくのを感じられる。

ストレンジアトラクタの振る舞い、そのものである。
(そもそもローレンツアトラクタは乱流のモデルか)

しゃがんでじーっと見ていたけれど、飽きなかった。
絶え間なく落下し続けるのに、
限りなく跳ね上がり続ける。
落下と跳躍のせめぎ合いが、情動系に訴えかける。

もうひとつインスタレーションの作品があって、
それはみたことがなかった。

洗面台の上にビーカーのようなガラス製の円筒状の容器があって、
そこに上の蛇口から絶え間なく水が流れてくる作品。
少量の水があふれてゆき、入ってきた水がビーカの水面を乱す様が
なんとも言えず静謐かつダイナミックだった。
ぱっと見ただけでは気付かないけれど、
ビーカーの中には短冊状の薄い布が入っていて、
水の震えによって、微かにだが動き続けている。
それが何かを訴えかける。

受付には作品の名前の一覧表が置いてあって、
ほとんどが「無題」だった。
作品の横には値段が書いてあって、40万から150万ぐらいだった。
値段が書かれているのをみて、息がつまってしまった。
値段の高さに驚いたとか、そういうことではなくて、
内藤さんの作品に値段をつける、という行為にびっくりしてしまった。
芸術作品に値段をつけるなんてケシカランとかそういうのではなくて、
ただただ内藤礼の作品から受けるものと、
値段をつけるという行為のギャップにびっくりしただけ。
冷や水を浴びせられるかのような。

2005年にみた「地上はどんなところだったか」展みたときの衝撃は、
今でも覚えている。
アート、特に現代アートと呼ばれるものに懐疑的だった自分にとって、
そんなつまらない思いこみを吹き飛ばすには十分すぎる体験を、
内藤さんの作品は提供してくれた。

いつかもっとお金ができたら、あのとき見た、
「ナーメンロス/リヒト」を手に入れたいと願う。

虚空を漂う糸を見ていたら、
昔飼っていた金魚のことを思い出した。
アホのように水槽をたゆたう金魚も、やはり見ていて飽きなかった。

あの金魚は自発的にあのように泳いでいたのだろうか?
自由意志は?


***
http://melonsode.fem.jp/fs/log/2007/09/20070926.html
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