歯医者さんから葉書が来て、年に一度は検診をということで、
家から目と鼻の先にある歯医者さんに行った。
生えかけの親知らずが気がかりだったのだ。
また前回と同じくおじいさんの先生が診てくれた。
検診ついでに歯を簡単に洗浄してもらって、
一年ぶりにレントゲンを撮った。
前回見た時とは違ったレントゲン装置になっていて、
新しくてやたらに小さい。
一昔前にレントゲンといえば、
レントゲン室に入って、ばたんと扉を閉じられて、
「はいでは呼吸を止めて」と室外からマイクで言われて、
「バシャ!」「はいけっこーでーす」と
なっていたわけだが、
いまは治療イスに座ったままで、
装置が頭の周りをぐるっと一周する。
おそらく一定の速度で回転しながら撮影したデータを
コンピュータで再構築するのだろう。
得られた写真は精細で、すみずみまで歯が映っている。
前回もやったので、そのX線撮影の技術革新自体には驚かないのだが、
今回はなにか前と違った音がした。
前は撮影している間、静かだったと思う。
だけど今回は、装置が
「べり、りり、り、りり、べり、べり、り、り・・・」
という音を立てながら頭の周囲を回る。
それほど大きい音ではなくて、
気にしなければ気にならないのだが、
その装置から出てくる音としてはあまり似つかわしくないので、
やはり気になる。
何か、ガムテープを剥がしているような、そんな感じの音。
レントゲン写真をみると、一年前とは歯の向きが大きく変わっていた。
前は歯茎の下で、歯がほぼ横向きに生えていた。
下の左右の親知らず両方とも。
ところが、今回の撮影図をみると、横向きだった歯が、
なり上向きに変わっていた。
前は仰角10度程度だったのが、75度ぐらいまで変わっていた。
生えかけ、とはいっても歯茎の下にはほぼ完全な形の歯があって、
もうそこからは変化しないような感じだったから、
いい方向に変わっていてうれしかった。
歯医者さんも
「かなり上向きになってきているね。
炎症などないし、いまのところ問題がないなら、
もうすこし様子を見てみるのがよろしかろう」
と言ってくれた。
それでほっとしたところで、
さっきのX線撮影装置のことを質問してみた。
「さっきのX線の機械ですけど、あれ、ずいぶん新しいですね?」
「ああ、あれね、最近、入れたんだ。業者がうるさくってね。」
「あはは、セールスマンが?」
「そう。まあ、ずっと付き合いのあるところだったから、断り切れなくてね。
まあ今までのと比べものにならないぐらい安かったけれど。」
「そうなんですか。なんか、ベリ、ベリっていう音がしてましたけど・・・」
「ああ、あれはテープが剥がれている音でね。」
「え、テープ?テープって、まさかガムテープとかそういう・・・?」
「いやあ、わしも詳しくないんじゃが、
そうすることでエックス線が発生させてるんだと。
いままでは高電圧をかけて電子線を発生させて、
それを金属にぶつけてエックス線を作っていたから
装置は高価にならざるを得なかったが、
テープを剥がせば作れるってんだから、
簡単なもんさな。
装置の値段の桁が一個違ったよ。ハッハッハ」
「えー?ほんとですかあ?テープでエックス線って。」
「業者のやつがそういってたんだ。
それにほら、これが交換用のカートリッジだよ。」
といって、ぶっといセロハンテープみたいなものを見せてくれた。
サランラップの半分ぐらいの幅があって、
剥がすところに頑丈そうな金属の筒が付いている。
おそらくそれを持ち上げて剥がすのだろう。
「これを装置にとりつけるんだ」
そう言っていた。
セロハンテープでレントゲンて、なんだそれって思ったが、
帰ってきて調べてみて驚いた。
本当にそうみたいだった。
セロハンテープを勢いよく剥がすとX線が発生する、米研究者がネイチャーに論文発表 - Technobahn
Wikipediaにも書いてあるし。
X線 - WIkipedia
この現象を最初に発見したのが旧ソ連の研究者、というあたりが、
個人的には何故かツボで、笑ってしまった。
いまこのコメント欄読む瞬間まで信じてたよ!
ネイチャーの記事は知ってたから、えーまじかよ
実用化がそんな早いなんてことがあるのかよ。
すげえなあってまじで信じ込んでしまった。
楽しませてもらいました。ありがとう。
分かると思うけど、エイプリルフールに乗じた記事です。