作成:2008-07-01 01:56:04
日曜日、雨の中ターナー賞の回顧展に行った。
森美術館。
「英国美術の現在史:ターナー賞の歩み展」
http://www.mori.art.museum/contents/history/index.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/ターナー賞
http://en.wikipedia.org/wiki/Turner_Prize
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デミアン・ハースト(Damien Hirst)の「母と子、分断されて(Mother and Child, Divided )」1993。
http://www.tate.org.uk/britain/turnerprize/history/hirst.htm
写真では何度か見ていたけれど、
実物は圧倒的な説得力があった。
タイトルは冗談も入っているのだろうか。
牛の母と子が分断されている。縦に。
母と子が離ればなれになるという意味ではなくて、
物理的にそれぞれの体が分割されている。
生き物の体を真っ二つにして、
その切断面が剥き出しにガラス越しに見える。
生物の内側と外側。
それはとてもグロテスクな光景のはずなのに、
目をそむけずにいられる。
そこを見てみたいという好奇心が働くし、
不思議とグロテスクさは鼻につかなかった。
白い木枠に透明なガラスを張って作ったきれいな箱があって、
その中が透き通った水色の液体で満たされている。
牛はその中に置かれている。
半分ずつ。
水色の透明さと枠の白さがなんとも静謐な感触を与えていて、
グロテスクさを消臭している。
圧倒的な説得力、と書いたけれど、
何を説得されたのかはよくわからない。
でも、作品を見た瞬間に、
「もう黙ってみるしかないな」と
思わせられたのは確かで。
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ヴォルフガング・ティルマンス( Wolfgang Tilmans )の
作品も展示されていて、
やはり、ティルマンスのセンスは
とても自分好みだということを再確認した。
この人の色のセンスはずばぬけている思う。
ヴィヴィッドな色彩感覚は蜷川実花の写真に少し似ているかもしれない。
でもけばけばしさはなくて、洗練されている。
被写体の選び方にも独特なものがある。
被写体は、日常的なものもあるし、
性的にタブーなものを撮影したドぎついものもあるし、
I don't want to get over you(君を忘れたくない)のような
叙情的なものもある。
ティルマンスは
ティルマンスの感性にひっかかったものを撮っているだけで、
きっと悪気はないのだろうと思わせる。
http://www.hammer.ucla.edu/exhibitions/104/work_602.htm
ティルマンスにおいてもうひとつ独特なことは、
彼が写真一点一点を完結した作品として考えているのではなく、
複数の写真が、あるサイズ・ある相対的位置関係で配置されたもの全体を
ひとつの作品として考えているという点だ。
ティルマンスに聞いたわけではないけれど、
たぶんそういうことを考えていると思う。
彼は、入念に写真のサイズや写真の位置、
写真と写真の位置関係を考えている。
最初の写真をみてから最後の写真を見るまでの体験を
ひとつの作品としている。
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アニッシュ・カプーア( Anish Kapoor )の作品もあった。
金沢21世紀美術館でカプーアの作品を見たときは度肝を抜かれたものだった。
http://www.scaithebathhouse.com/ja/artists/projects/kapoor01/
畏怖を抱かせるような絶対的な無があったからだ。
(厚さ3ナノメートルでディラックの海という虚数空間を内包するレリエルみたいだと思った(笑))
それと似た作品が展示されていた。
あったのは、Void No.3だったかな。
金沢の「世界の起源」よりはスケールの小さな作品で
'穴'との距離が近いとことでみることができた。
思わず作品の'裏側'をみてしまう。
そこだけ3次元的連続性が断絶しているかのような錯覚が起こり、
得体の知れない気持ちで心がざわつく。
よく見ようとするけどよく見えない。
真っ黒で太い線維がごわごわしている布が
深い中華鍋みたいな形をしていて、
それが中に吊ってある。
インスタント・ブラックホール。
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その他、クリス・オフィリ(Chris Ofili)の
「ノーウーマン ノークライ(No woman, No cry)」とか
グライソン・ベリーの女装インスタレーションとか壺とか、
レイチェル・ホワイトリード (Rachel Whiteread)の中身だけの家とか、
Gillian Wearingの逆回し母娘喧嘩とか60分間そのままでいてくださいとか。
良い作品がいっぱいあった。
http://www.ukjapan2008.jp/editors/index-turner.html
今年の秋からターナー賞に注目だ。