重い体をひきずって、CSL。
学会発表間近の後輩がテンパりながらプログラミングをしている。
サブリミナルに刺激を呈示したいのだが、
刺激呈示時間を10ミリ秒にしても見えてしまうのだという。
サブリミナルというのは「閾下」という意味で、
悪名高いサブリミナル効果で有名だ。
サブリミナル刺激とは「何かを見た」
という感覚を生じさせないほど
短時間で些細な刺激のこと。
映画のフィルムの中に3ミリ秒だけ
「コーラを飲もう」「ポップコーンを食べよう」
というメッセージを入れて上映したところ、
コーラの売り上げが57%、ポップコーンが18%伸びたらしい。
サブリミナルに関しては、
自分でも実験でやってみようと思ったことがあって、
だけど、うまくいったことがない。
プログラムを見せてもらいながら
一緒にあーだこーだ言っていたけど
結局、わからずに時間切れになった。
以前サブリミナル刺激を実験に組み込もうと思って、
参考にした論文がこれ。
[PDF]Cerebral mechanisms of word masking and unconscious repetition priming
多数の正方形が様々な角度と位置で同時に表示され、
時間経過とともにそれらの配置は変化している映像の流れの中に、
一瞬だけ文字の情報が入るというもの。
再現しようと思ったけどうまくできなかった。
ずっとパソコンからモニタに出力する際に何かしら
不具合が起こっているのではないかと思っていたけど、
いま軽く調べたらリフレッシュレートとフレームレートを
勘違いしていたことに気付いた。
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa2299974.html
http://yuiricher.blog42.fc2.com/blog-entry-44.html
http://e-words.jp/w/E59E82E79BB4E8B5B0E69FBBE591A8E6B3A2E695B0.html
リフレッシュレートとフレームレートはイコールではない。
うーん、でも、リフレッシュレートはフレームレートの上限を制限する
ものではあるのか?
リフレッシュレートが100Hzの場合、
100fpsより大きいフレームレートは実現できないし、
フレームレートの取り得る値も制限がかかる。
1描画1フレームで100fpsが実現できるが、
2描画1フレームだと50fpsになる。
3描画1フレームだと33.333fpsになり、
4描画1フレームだと25fps。
100/n fps (n=1,2,3, ...)というフレームレートしか実現できない
ということか?
帰ってきて、サブリミナルといえば、と思ってこの本を引っぱり出した。
下條信輔さんの「サブリミナル・マインド」
上で述べた映画館の話はこの本から引いた。
あの話の出典はヴィカリイ 1957年らしい。
(そしてそれ以上の情報が載っていない。)
映画のフレームレートは24fpsか30fpsらしいのだが、
サブリミナルとして挿入された映像は3ミリ秒らしい。(p.142)
どうやって挿入してるんだ?
30fpsでも1フレームあたり30ミリ秒以上かかる。
挿入された映像は30msの間違いじゃないのか?
周辺のページをパラパラめくっていて、
刺激をうまく閾下で呈示できないのは、
そいういう技術的な問題じゃなくて、
もっと呈示する刺激に依存した問題なんじゃないか
と思い始めた。
(p.141)
「また図形や単語をごく短い時間
(たとえば百分の一秒)呈示してから、
より強い刺激(マスク)を呈示すると、
最初の図形や単語は文字通り
「覆われて」見えなくなります。
これを「逆行性マスキング」と呼びます。」
と書いてあって、
サブリミナル刺激では、
サブリミナル刺激とマスク刺激のsaliencyの違いが
重要なのでは、
と思った。
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下條さんのこの本をパラパラめくって、
あることに気付いた。
実は持ってるだけでこの本読んでなかったのだけど、
「サブリミナル・マインド」というタイトルから
サブリミナル効果に関することばかり書いてある本だろう
とばかり思っていたら、
全然そんなことなくて、
視覚心理物理のハードコアな部分がキチンと書いてあるし、
「悲しいから泣くのか、泣くから悲しいのか?」という
情動の認知科学では定番の話や、
ガザニガの分離脳の話、
今でいうニューロエコノミクス系の話や、
リベットの実験が絡んだ自由意志の議論などが書いてあって、
かなり良質な認知神経科学の教科書になっている。
暇を見つけてページを繰ろうと思う。