フェムトセカンド #七味とーがラジオ / @melonsode

The Destination is unknown. The Journey is the Reward.
Author: 野澤真一 / NOZAWA Shinichi , version 2.0220330 / Podcast: 七味とーがラジオ / twitter: @melonsode

There will be blood

|

カテゴリ:

映画を見た日:2008-05-17 03:41:17あたり

イチニクスさんの日記に触発されて。
http://d.hatena.ne.jp/ichinics/20080630/p2

しばらく前に見た映画「There will be blood」の感想。

まだこれの感想を書ける段階ではないな、と思ったのだけど、
やはり何かしらを書いておく。

映像がきれいだった。
無粋な物が映ってなくて、
都市化されていないそのままの風景がきれいだった。
特に、石油の場所まで掘削が到達して、
油井が激しく炎上するシーンは、
映画館の巨大なスクリーンでみているせいもあって
圧巻だった。

掘削の作業中に事故があって作業員が死んでしまうシーンがある。
掘削する機械の何かが外れて、
そうして、それが落下して、
下にいた人にぶつかって、
即死。
まるでドミノ倒し見たいに、
カン!ギン!ドン!バタン、と動きが連鎖する。
そのあまりに無慈悲な死の描き方が、
冷え冷えとするリアリティを与えていた。
ああ、こうして事故は起こって、こうして事故死する人がいるのだ、
と有無を言わせぬ説得力があった。

物語は1898年から始まり、1927年に終わる。
http://en.wikipedia.org/wiki/There_Will_Be_Blood
その間に、最初は家畜を飼って生活している閑散とした村が、
教会ができたり、労働者が流れ込んできたりして
段々と発展していく。
その徐々に村が変わっていく様子の描写が実にうまい。
レストランにはいると、
昔の取引相手で交渉が決裂した相手がいる。
そこで一悶着あるのだけど、
そもそも最初はレストランなんかなくて、
食事は自炊以外に手段がなかったはずなのに、
いつの間にか金さえ払えば何か食べられるようになったのだ
ということをさりげなく表現している。
それは誰かに「この村も栄えてきたな」とかなんとか言わせれば
済むことだけど、そういう風には表現しない。
違和感なく村の変遷を表現している。

話のなかで、主人公はどんどん強欲になっていく。
見終わったときに「ひどい映画だ」と思った。
映画の出来がひどいのではなくて、
非道い人物が描かれているという意味で。

アイディアを思い付いて、
それに基づいてある行動を起こす。
そうしてそれが成功する。
成功して得た物をものをもとに、
また新たな行動を起こす。

その連鎖で主人公は傲慢さと欲望を再生産する。
簡単に言うと嫌なやつなんだけど、
でも、そういう生き方を否定することはできないと思う。
むしろ、どこかで挫折して、
「やっぱり人間、大事なのは愛だよね」
とか改心してしまう話より、ずっと良いと思う。

自分の欲望に忠実であるということは、
とても難しいことだ。
ある欲望を抱いても、
その欲望が満たすことが困難な欲望だったらどうするか?
それはやはり諦めるか、他のもっと手軽なものに置き換えるか、
忘れるのを待つかする。
けれども、主人公はそんな風に欲望を風化させず、
あくまでそれを満たすことに心血を注いだ。
そうすることの方がきっとめんどくさくて大変なはずなのに。

静かで凄みのある映画だった。

監督はポール・トーマス・アンダーソンというひとで、
頭文字だけとって略すとPTA。(だから何だ。)

この人の他の作品も評価が高いらしく、
見てみたいと思う。

ボーイスカウトとしては、
前半のダニエルとH.W.が狩りをしながらの旅行を装って
石油の調査をする当たりのシーンの、
彼らの服装とか装備に興味がわいた。
当時、どんな装備が可能で、どんな風に野営したのか。
野営するとき、何が現地で手に入るモノで、
何が持って動かなければならないものなのか。
そういう観点からみると面白かった。

***

映画予告編。

余談だが、映画のラスト、
ダニエルがイーライを罵倒するシーンの
「I drink your Milkshake!」のあたりが
うけたらしく、YouTube上で色んな人がパロディを披露している。

そんなにおもしろいのか?このシーン。

プロフィール

月別アーカイブ

全アーカイブ

フェムトセカンド1.0


メールを送る(故障中)