フェムトセカンド #七味とーがラジオ / @melonsode

The Destination is unknown. The Journey is the Reward.
Author: 野澤真一 / NOZAWA Shinichi , version 2.0220330 / Podcast: 七味とーがラジオ / twitter: @melonsode

ヒッヒッフーはしなかった

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朝7時に嫁の電話で起こされて、
「陣痛っぽいものが来てるから今から病院に行く」ということを伝えられた。

前日の電話で
「検診の結果、子宮口がすでに数センチ開いており、
予定日の1/27よりは早くなり、出産まであと1週間はかからないだろう」
という話を聞いてはいたが、
それでもやっぱり「まああと数日は余裕がある」と思っていた。

そんなわけでまさに寝耳に水で跳ね起きて、急いで支度をした。
それでもやはり半信半疑で、
またいつもの腹痛じゃないのか?とか、
例え陣痛だとしても初産だと分娩まで12時間かかったとかいう話もあるし、
結構余裕があるんじゃないか?実際予定日はもっと先だったわけだし、
とか考えを巡らせながら身支度をした。

レンタルしていたDVDをTSUTAYAに返却して、
大急ぎで地下鉄に飛び乗って、
新幹線に乗るためにともかく東京駅へ向かった。

東京駅で新幹線の改札を通る直前で立ち止まる。
ここに入ったら「間違いだった」と言われてももう後戻りできない。
しかし、嫁に電話すると、もう入院したとのこと。
それでやっと覚悟ができて新幹線に飛び乗った。

とにかく来た新幹線に乗ってそれから携帯で
最短で行った場合の到着時刻を調べる。
嫁からは「早ければ13時には生まれてしまうらしい」ということを聞かされていて、
そして予想される到着時刻は13時ちょっと前なのであった。
もしかしたら出産の立ち会いにギリギリ間に合わないかもしれない。
長野行きの新幹線を大宮で降りて、
新潟行きの新幹線が来るのを待った。
なかなか来ないのでじれた。

落ち着かない感じで大宮駅のホームをうろうろしていたら、
頭にかぶっていた帽子が無いことに気付いた。
おとといに北海道で買ってきたばかりの帽子がない!
あれ、4000円もしたのにー、とショックをうける。
それで、割と冷静なつもりでいたけれど、
実はあんまり冷静じゃなかったのかも知れないというメタ認知を得た。

大宮から新潟までは打ち切られた睡眠時間の回収を行った。
新潟駅からは嫁の弟さん(つまり義弟、しかし年上)の車で
病院まで運んでもらった。
新潟は数日豪雪が続いたというのに、
今日はとてもよく晴れていた。

病院まであとほんのちょっとのところで赤信号にひっかかり、
そこで降ろしてもらって荷物を持たずに1人病院へ向かった。
その時点で13時4分で、もしかしてもう生まれちゃってる?という予感を
振り切るように走った。
ゼエハアいいながら病室に駆け込むと、果たして嫁はまだ悶絶中であった。
なんとか出産に立ち会えそうでほっとした。

それまでずっと嫁に付き添っていた嫁のお母さんと
付き添い役をバトンタッチして、
嫁と一緒にヒッヒッフーする。

というのは冗談で、実際にはヒッヒッフーはしなかった。
したのはフー、フーという感じだった。
5分置きだった陣痛が、やがて2分おきぐらいになり、破水が確認される。
そのあたりから、陣痛の時に痛みに耐えるという段階から
陣痛の時にいきんで子供を押し出すという段階に入る。
それはそれは強烈な、3週間溜め込んだ便秘を排泄しようとするが如くの
”いきみ”である。

こんなとき、夫というのはほんとに無力で、
汗を拭いたり、頭を撫でたり、暑いというので扇いだりということしかできない。
ガラにもなく、なにやら感動的な気分になってきて、目頭が熱くなる。
泣いたりすると恥ずかしいので、
頭の半分で
「いま嫁の下垂体からはオキシトシンが分泌されているのだなあ」
「胎盤ってどうやって引っ張り出すんだろう?」
「メスはこんなにも子作りにコストがかかるのに別のメカニズムで性比は1:1になってしまうのはかわいそうな気がする」
とかいうことを考えていた。

そんなこんなで、いよいよ助産師さんのかけ声が大きくなり、
産科の先生が呼ばれ、嫁の全身全霊の”いきみ”の後、・・・

ニュポン・・・・(スローモーション風に)

という音が聞こえた気がしたけどたぶん実際にはしてなくて、
嫁の股の間から赤く濡れた赤ん坊が現れた。

あ、あれが、赤ちゃん
オレたちの赤ちゃん?本当?本当だ!
あれが、そうか、そうなのか、
生まれたばかりの赤ん坊で、
オレたちの赤ちゃんなのか!
体が、赤くてヌメヌメしたもので濡れて・・・
血か!あれは血だ!
そして白くにょろんと垂れているひもが、
そうだよ、へその緒だよ。
お母さんと繋がっていたひもだよ。
へそから股の間につながっている。
本当だ!
あ、先生がはさみでへその緒を切るぞ・・・
生まれた!生まれたんだ!赤ちゃんが生まれたんだ!

あの一瞬のうちに思ったことを無理矢理テキスト化してみたら
こんな感じかも知れないが、でも到底表現しきれている気がしない。

先生が取り出した赤ん坊を掲げて見せてくれて、
「写真、撮るかい?撮るなら、はやくはやく!」言う。
それで慌ててデジカメを取り出して
シャッターを切るのだけど動画モードになっていて、
あわてて写真モードにしようとするも手元が狂ってなかなかうまくできないっていう、
ありがちな慌て方をしてしまった。

と、そっから先は書かないけれど、
ほんの微かに目をうるうるさせながら、その一回性の体験に身を委ねた。

これまで無数の人間が体験してきた「はじめて親になったときの気持ち」。
それがどんなものかわからなかったし、
果たして自分もそんな気持ちになるのかどうか疑わしいと思っていたけど、
やっぱり自分も”人の子”だったということだ。
くすぐったくて、身が引き締まるようで、
でも純粋に嬉しい。

がんばって生んでくれた嫁に感謝。
嫁よ!君は良い妊婦であった!

というわけで、本日、息子が生まれました。
みなさまどうぞよろしく。

コメント(5)

改めてオメデトウ。
しんちゃんも奥さんも、「赤ちゃんがお腹にいた昨日」までとは全く違う新しい日々が始まったね。
すっごーーーい大変だけど、ものすごーーーーく幸せな毎日になると思います。
いつかユークと胡桃さんと一緒に息子さんに会いに行きたいです!

ほんとにほんとうにおめでとう!

しんちゃん、奥さん、二人の赤ちゃん、本当におめでとう!
無事生まれて本当に嬉しいです。
また改めてコメントさせてね。

Congratulations!
What a beautiful moment.

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